【ひなたのこども】第20回『わたしと演技のかかわり(その1)』

演技の勉強

私が大学に入って間もない時、ゼミの先生がこんな課題を出しました。「次回、一人一人に3分間の自己紹介をしてもらい、それをビデオに録ります。」

それを聞き、「なんてひどいことをする先生なんだ」と思いました。

自分のことを話してる自分の姿を見るなんて、こんな恐ろしいことがこの世にある?!

今思えばそれが、私が演技と関わり、役者を志すことにもなったすべての始まりでした。

役があって、それを自分の姿・自分の表現で具体化し、人に見せる仕事。
それが役者という仕事なのかな、と私は思っていて。

役者という仕事は、まず自分で自分を見なければできません。

役になりきる、といっても、その役にぴったりくる感情やら仕草やらを役者自身の引き出しの中から探し出し、足りなければ外の世界を見て吸収し消化し自分のものにして、想像して、自分の表現をするわけです。
そうやって表現した役が、見ている人の中で生き、心の琴線に触れたとき、共感や感動が生まれるのですね。

なんて厳しくてすばらしい職業なのだろう、と思うのです。

私が本格的に「演技が学びたい!」と気付いたのは、そのゼミの出来事があってから数年後、社会人になってたまたま参加したミュージカルを体験する習い事だったのですが。
なんとそのミュージカル体験の演技のレッスンでも、ゼミと同じことをしたのです。
「自己紹介を録画して見てみましょう」って。

このときは3分ではなく一言二言で良かったのですが、一般人にとってはやっぱり衝撃的。
そもそも今みたいにスマホで簡単に動画撮っちゃう、なんていう時代でもなかったし。自分を見る機会なんてそうないわけですから。
そしてそこで、「これが役者という仕事なんだな」と気付いたのです。

常に自分を見て、自分を噛みしめて、どんな自分も受け止め消化して、外に向かって表現する役者の方たち。
自分もそんな風になりたい。
自分の表現が人を感動させることができるとしたら、役を通じて世界の一部になれたら、どんなに素敵だろう。

そうして、私は演技と関わる生き方をスタートさせました。

俳優養成所に入ったり、社会人劇団に入ったり、俳優事務所に入ったり。

これらで得たすべてのことが、私を作っています。

養成所で勉強した、滑舌だったり、腹式呼吸だったり、ダンスだったり。
ダンスが苦手で、当時は必要あるの?と思ってましたが、ダンスは全身を使った表現。表現の幅を広げることは演技に役立ちますよね。できる部分が大きければ、その中の一部を使って表現に生かすこともできるけど、もともとできる部分が小さければ表現に限界が来てしまう。これは違う分野でも然り。

社会人劇団で得た仲間が宝だったり。
十数回の公演をしてきましたが、一つの舞台を作り上げるために共に時間を過ごしてきた仲間というのは、会わない時間もお互い支えあえるものなんです。

俳優事務所所属時代に経験した撮影現場だったり。
私は出演といっても、よくある「再現VTR」の中のわき役やエキストラでしたが。
驚いたのは撮影にかかわる人の多さ。多忙さ。
なんかもう、小心者の私としては、「私一言言うだけなのに、なんか済みません。何か手伝いましょうか?」みたいな気持ちになってきます。
いやいや、役者として呼ばれているんだから、現場にはそれだけのもの(役者としての存在)を持っていくことが仕事なのですよね。たとえエキストラだったとしても、一瞬でも作品にかかわるわけだから、責任があるわけです。
そこにいなくても作品にかかわっている方がたくさんいることを想像し、この場所この時間だけで完結しない、この仕事の大きさを感じました。

今、私は子育て優先の生活を送っています。

自分のやりたいことに優先順位をつける。これはとても大切なことだと思っています。
人が自分の足で立って生きていく上で欠かせないことだと思っています。

生きている年月が長くなればなるほど、やりたいこと、手放したくないものは増えていく。
でもあれもこれも、全てを自分のメイン場所に持ち続けることは、時間も頭も体も心も足りません。
全部持とうとか、良いとこ取りしようとか思うと、すべてが中途半端になったり、持ちきれなくて全て落っことしたり、体が支えきれずに転倒したり、動けなくなって泣きながら人に助けを求めたり、ということになりかねない。

今の自分にとって、一番優先にすべきことは何か。
もっと言えば、何を手放すのか。

手放したものは二度と帰ってこないものもあるし、また時期が来たら取り戻せるものもある。

それをよくよく考え、自分で選ぶこと。
人生は選ぶこと。

…なんて大げさになりましたが、私は今子育てを選んでいます。
何をおいても、この子供達のそばにいる、味方でいる、そう決めている、つもりです。
(”つもりです”とか言っている私の弱さよ。自分の決断に自信がないのではなく、子供達がそう思えるような子育てができているか自信がないのです。)

役者の仕事や、演技の勉強は、時期が来たら必ず取り戻せるものだし。

…と思いながらこの8年9年、演技とは遠い場所で生きていたんだけど、実はこの春〜夏、ちょっとした転機が訪れたのです。

実は今私は、またちょっとだけ演技に携わることができています。
と言っても何かに出演するとかではなく、あるワークショップで演技を学ばせてもらっています。
このワークショップが刺激的で。

長すぎるので続きはまた!

ひなたのこども

【まいぷれかまくらかるちゃー】第16回 ラ・コクシネルオーナーシェフ齋藤穣一さん(第2話)

鎌倉市由比ヶ浜のフレンチレストラン

ラ・コクシネルシェフの齋藤襄一さん。

パリの3つ星レストランで腕を振るってきたフランス料理人のシェフが最初に料理を始めたのは、なんとインド料理店でした!

そのなぞは、フランス料理の本質やフランス料理の成り立ちがルーツでもありました。

今回はフランス料理の魅力を齋藤シェフからとても分かりやすくお話していただきました。

ラ・コクシネル